積水化学工業の工場跡地に完成した〈あさかリードタウン〉。
安心して暮らせ、愛され続ける街を目指しグループの総合力を結集してつくられました。
そんな肝入りのプロジェクトに携わったスタッフの方々に話を聞きました。
各グループ
Profile
【 積水化学工業株式会社 住宅カンパニー まちづくり事業推進部 渡辺 剛史氏 】
積水化学グループ初となる、壮大な複合開発の街づくりをプランニング。
開発グループ長として〈あさかリードタウン〉の開発を指揮。
積水化学グループの技術を結集した、
災害に強い「安心・安全」の街。
「〈あさかリードタウン〉は、私どもとしてもこれまでに経験のない壮大なスケールの街づくり。積水化学グループ全社のベクトルがひとつになったことが、成功の理由だと思っています」と話す、住宅カンパニー・渡辺氏。開発グループのリーダーとして〈あさかリードタウン〉の開発を指揮しました。
「目指したのは、安心・安全に暮らせる街づくり。水害が起こりにくい街にするために、マンションエリアから戸建てエリアの勾配をもたせた『南向きひな壇』の形状としたり、配管材のエキスパートである社内の事業部門〈環境・ライフラインカンパニー〉の『エスロンRCP管』という貯水性に優れた高耐久のプラスチック管を導入することで暮らしを守るインフラを整えたり。さらにIoT技術なども活用して、かつてない新しい街づくりに一丸となって取り組みました」。
2020年に街が集中豪雨に見舞われた際も、タウン内において冠水は発生せず。街の地下に張り巡らされた先進の技術が、住む人の暮らしを守りました。
見えないところに安心のインフラを。模型で解説する渡辺さん
いつまでも美しい街であるために。
注力したのは、緑ある環境づくり。
「インフラだけではなく、『自慢できる街をつくろう』という想いが根幹にありました」と話す渡辺氏。特に注力したのは、緑のある環境と言います。「タウン内に豊富な植栽を施し、周辺の自然環境や生態系保全に配慮した取り組みにより〈ABINC ADVANCE〉を初取得しました(※)」。
また、景観にも配慮し電線のない街を実現。「電線がないと、空も広く見えるんですね。地震などの有事の際に電柱が倒壊する心配もありませんし、電線から鳥のフンなども落ちないので街の美観が保たれることもメリットのひとつです」と話します。いずれも朝霞市初となる取り組みは、〈あさかリードタウン〉の美しいロケーションに大きく寄与しています。
※ABINC(一般社団法人いきもの共生事業推進協議会):いきものと人が共生できるしくみをつくり、科学的・技術的に検証し、事業化を推進することを目的としています。生物多様性に貢献する面積率25%以上を確保することにより「あさかリードタウン」では、2018 年度スマートハイムシティ朝霞としてABINC(いきもの共生事業所® )認証、2020年度にABINC ADVANCE(エイビンク・アドバンス)認証を取得いたしました。
街路には経年劣化を起こしにくく美観を保つ
スタンプアスファルトを採用
朝霞市とともに、力を合わせて。
未来の街づくりを推進。
「タウン内〈ネイバーズサークル〉の宮台公園についても、管轄する朝霞市に掛け合って、街と一体感のある植栽計画を遂行しました。通常、四角い形をしている公園を、街のコミュニティエリアとするために扇形にしてほしいといった要望も提出。朝霞市にとっても、ここは都市計画マスタープランにおいて重要な地域に指定しているエリアですから、そのなかで創り上げる街をより良いものにしたいという想いがあり目的が一致しました。力を合わせて、理想的な街づくりが遂行できたと思います」と渡辺氏は話します。そして街が完成した現在。どのような感懐を抱いているのでしょうか。
「タウン内をぐるりと見回すと、『ああ、やっぱりいい街だな』と実感します。なにせ開発段階からずっと携わってきたものですから、当初の図面が現実に形になったということが感慨深い。とても喜びを感じますし、達成感もありますね」。
タウン内のシンボルパーク宮台公園
※掲載の写真はすべて2021年6月に撮影したものです。
Profile
【 積水化学工業株式会社 住宅カンパニー まちづくり事業推進部 有原 正勝氏 】
〈あさかリードタウン〉の計画発足時から、街づくりの開発スタッフとタッグを組み、〈ハイムスイート朝霞〉の建築プランを担当。
妥協のないものづくりで
防災・減災に挑むマンション。
「目指したのは、ずっとそこに『安心して住める』ことを実現すること。『60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まい』というセキスイハイムのスローガンを、マンションを建てるうえでも当然やらなければいけないわけですから──」と話すのは、〈ハイムスイート朝霞〉のプランニングに携わった有原氏。
「マンション1階のフロアレベルおよびエントランスのレベルを、河川が氾濫したとき予想される最高水位より高い位置に設定することで水害から住民の方を守ります。電気室も地下ではなく地上階に配備することで水没のリスクを減少させています」。さらに万一の被災時にも水や電気が自宅で確保できる仕組みを備えるなど防災・減災について積極的に取り組んでいると話します(※1)。また、躯体にもこんな工夫が。
「『長谷工コーポレーション』の持つ高い施工力と、積水化学グループのインフラ技術を組み合わせることで、より妥協のないものづくりを目指しました。またコンクリートの強度も、30ニュートン(※2)という高強度のコンクリートを採用。永く安心して住むことができるスペックを備えており、当然、地震にも強い躯体と言えます」。
※1:非常時、断水から3日以上経過した貯留水は、水質が低下している恐れがありますので、飲料水としてご利用の場合は、煮沸してからご使用されることを推奨いたします。※同時に使用できる電力に制限があります。また、事前に設定したスイッチ・コンセントしか使用できません。 ※2:本体以外の一部除く
時代にあわせプランニングした共用施設〈スタディコーナー〉
心地よく、快適な暮らしのために。
多彩な共用部に込められた想い。
大規模マンションならではの多彩な共用部が充実している〈ハイムスイート朝霞〉。その設計にも有原氏は携わっています。
「朝霞市の待機児童問題を解消するために、行政側からも保育園の設園が求められていました。そのため、タウン内に保育園をつくることを前提に開発がスタート。〈あさかリードタウン〉には、0〜2歳児を受け入れる『元気キッズ あさかリードタウン園』が。〈ハイムスイート朝霞〉棟内にも0〜5歳の子どもを受け入れる認可保育園を設置しました」。(※3)
「タウン内の敷地は災害時に安全性を確保するため傾斜をもたせていますが、歩行の際に負担を感じないよう緩やかな勾配に。商業棟の土台の高さを調整し、ウッドデッキをフラットにつなげることで歩きやすいように設計するなどユニバーサルなデザインを心がけています」と有原氏。暮らす人への細やかな心配りは多彩なマンションの共用部にも活かされています。
「『プラススイートリビング&プラススイートダイニング』は、もうひとつのリビング・ダイニングとして使えるマルチスペースです。室内に可動間仕切を採用しているため開放的に使うこともできるし、シーンに合わせて空間を仕切って機能的に利用することもできます」。
「近年増加するテレワークのニーズにも応えられる「スタディコーナー」も用意しました。中庭の植栽を眺めながら、プライベート感のある書斎のように利用できます」。
「1階と2階にはホワイエという共用部を用意しました。ホワイエというのは、劇場やホールなどの入口から観客席までの広い通路のこと。“わが家”という人生の劇場の幕間に、家族同士が行き交い、コミュニケーションができる場として活用していただければと思います。2階から見える夜景も美しく、個人的にも気に入っている場所ですね」。
※3:保育園は、居住者の入園を保証するものではございません。居住者以外の第三者も利用します。
バーチャルライブラリーを備えた「ホワイエ」
細やかなこだわりと工夫が、
日々の暮らしやすさを支える専有部。
〈ハイムスイート朝霞〉には「住む人想い」のポイントが散りばめられています。すっきりと片付く、大容量の収納。効率的な生活動線。暮らしをサポートするIoT機能。それだけではありません。
「バルコニーにゆったりとした奥行きを持たせており、広い部分は約2.2メートル。LDKとつながる開放的なアウトドアリビングとしてホームパーティー等にも使え、暮らしの楽しみを広げます」と有原氏。さらには、細やかなこだわりも。
「玄関の横には、自然換気と明かりをもたらす小窓を設置しました。開閉できるので、住まいの中を心地よい風が通り抜けます。これまでのマンションのウイークポイントを解消できるよう工夫を凝らした箇所ですね」。
積水化学グループに属する複数のカンパニーによる横断的なプロジェクトとして開発がスタートした〈ハイムスイート朝霞〉。そのものづくりにかけるスタッフの想いは、並々ならぬものがあったと有原氏は語ります。「私たち建築部門の人間だけではなく、さまざまなジャンルの人たちが集まり、知恵を出し合って創り上げた『積水化学グループの技術と品質の集合体』。それがこの街づくりであり、ハイムスイート朝霞というマンションなんです」。
完成した街を眺める有原氏
※掲載の写真はすべて2021年6月に撮影したものです。
Profile
【 セキスイ合人社タウンマネジメント株式会社 取締役 企画室長 山本隆浩氏 】
〈あさかリードタウン〉において、積水化学グループ初となるタウンマネジメントを導入。サステナブルな郊外の街づくりを推進する山本氏。
住人専用アプリを活用して
もっと、住みやすい街に。
「積水化学グループのつくる街〈リードタウン〉では、その立ち上げに際してあらたにタウンマネジメントの組織を構成しました。〈あさかリードタウン〉はその第一弾となります」と話す山本氏。タウンマネジメント会社の取締役を務めており、街の清掃・点検・見回り・相談窓口、セキュリティなどの分譲管理を軸に、コミュニティ支援、ライフサポートのサービスを提供することで、〈あさかリードタウン〉に住む人々の日々の暮らしをサポートしています。
「未来を見すえた『サステナブルな街づくり』を実現するためには、タウンマネジメントが必須という考えのもと会社を設立し運用を開始しました。将来に亘って郊外の街の魅力をどのように維持・管理するか。それは住宅を供給する私たちのミッションでもあります」。
〈あさかリードタウン〉では、住人専用アプリ「NiSUMU(ニスム)」(※)を導入。これは、スマートフォンにてタウン情報、回覧板、カーシェア・シェアサイクル情報、集会室や備品の予約・貸出情報を閲覧できるワンストップサービスです。利用率は住人の90%以上になるとか。さらに戸建分譲エリアでは、チャットやアンケート・投票を通じて、住人の皆様と意見を交わしながら、街をよりよくしていこうという新しい取り組みも。
「たとえばゴミ捨てに関することや駐車に対するマナーなど、タウン内において改善したい事柄についての意見交換ができます。また、アプリの投票機能を使って、皆さまの意見を反映して物ごとを決定する。そうすることにより、理事会の役員が休日に出席して決定する制度に置き換えることができ、行政と交渉するための意見集約の手間も省ける。今の時代にふさわしい、合理的な街の管理運営の仕組みです」。
※株式会社Secualと積水化学工業株式会社が共同開発したスマートタウン向け統合サービス。
タウン内の街灯には防犯カメラを設置。人の目と機械の目で見守る
安心できる暮らしを見守る、
タウンコンシェルジュのいる街。
タウンマネジメントの一環として、戸建分譲エリア内に「タウンコンシェルジュ」を配備する〈あさかリードタウン〉。コンシェルジュは、どのような役割を担っているのでしょうか。
「街の清掃のほか、共用部分の点検や見回りを行っています。小さなお子さんにお声がけをしたり、不審者の出入りや駐車違反をチェックするなど、いわば街の監視役。ほかにも相談窓口として、街のなかで起こったことや気づいたことなど些細な事柄についての相談も随時引き受けています」。
実際、タウン内に「スズメバチが出た」といった住人の声により、コンシェルジュが駆け付け、アプリにて住人の皆様にお知らせしたケースもあるとか。「いつでも住人の皆様に気軽に声をかけてもらえるように、アプリにはコンシェルジュがいまタウン内のどこに居るのかをお知らせする機能も用意しています」。
また、防犯面に関してはさらなる安心の備えも。「〈あさかリードタウン〉は、公園と商業施設を備えた複合開発タウンのため、不特定多数の出入りがあります。不審者対策として、街灯のなかに防犯カメラを組み込むことで、さらなる安全対策を実施。人の目と機械の目を組み合わせることにより、さらに高いレベルの安全性を実現しています」。
コンシェルジュによるこまめな清掃により街の美観を保つ
郊外ならではの豊かさを提案し、
アップデートし続ける街。
タウン竣工後に和光市直通のシャトルバスを試験運用するなど、住人に必要と思われるサービスを導入し、より快適な暮らしを更新する〈あさかリードタウン〉。「住人の皆様に『寄り添う』というのは、私どもの住まいづくりにおけるコアバリューだと考えています。タウンマネジメントによって得た知見を、今後の〈リードタウン〉シリーズの街づくりにも活かしていきたい」と山本氏は話します。
「これからの郊外の街に必要なものは何かと考え、そして新しいサービスを創造していく。〈あさかリードタウン〉において、アプリを活用した新しいサービスの実証実験を行い、成功したものはさらにアップデートを重ねる。そのような仕組みを強化していきたいと考えています。そして、都心の利便性にも負けない“郊外ならではの暮らしの豊かさ”を、つくりたい」。
── その想いは、かつてリフォーム部門を担当していた時の気持ちとも重なると言います。「高齢化・過疎化してしまった郊外に暮らすお客様からの、『築30年の家にこのまま住み続けるべきか』というお悩みに直面し、いつかその問題を解決したいと切に願っていました。住宅1戸では解決できなかったことも、タウンマネジメントによってなら解決できる。『街ができて終わり』ではなく、その後も街の魅力を維持・向上させるようなサービスを提供し続けることが、これからの私どもの使命だと考えています」。
20年後、30年後も誇れる、理想的な郊外の街づくりを目指す
※掲載の写真はすべて2021年6月に撮影したものです。
プロジェクト対談
〈あさかリードタウン〉の街づくりを牽引した住宅カンパニーの有原氏と渡辺氏。サステナブルな街の実現に向け、ものづくりにかけた想いを存分に語っていただきました。
積水化学グループを代表する街、〈あさかリードタウン〉。
その街づくりを牽引したのが、住宅カンパニーの有原氏と渡辺氏。
暮らしの安全・快適・便利を実現するサステナブルな街の実現に向け、
ものづくりにかけた想いを存分に語っていただきました。
我々の役割というのは、街づくりの計画を担当しているのが渡辺さんで、建築物のプランニングをしているのが僕。〈あさかリードタウン〉においても日々連携してプロジェクトを進めました。
〈あさかリードタウン〉では、景観のバランスがとれるように、全体の配置計画において幾度となく試行錯誤を繰り返しました。最終的にはマンションを南向きに配棟したプランが、ランドスケープ上もっともおさまりが良かった。
この街は、地域特性を鑑みて水害対策なども最初から計画されているんですね。街全体が、マンションエリアから南へ下がった「南向きひな壇」の形状で、それに合わせてマンションのフロアレベルが決まっている。盛り土をすることで傾斜地を人工的につくり上げています。
それによって災害を未然に防ぐ安全性と、快適性──採光や風通しといった開放感の実現を目指しています。
たとえば将来的に目の前に高い建物が建って眺望が失われたり、日当たりが悪くなるという心配がない。マンションと戸建ての一体開発だからできたこと。
ここはバリアフリーも考慮していて、できるだけ段差をつくらないようにしています。ですので、街区内の道路も徐々に上がっていくように緩やかなカーブを描いているんです。完成までには多くの苦労もありましたが、行政、設計・施工関係者、近隣の皆様のご理解、ご協力により素晴らしい街ができました。そのことを感謝するとともに、街づくりがスムーズに進んだのは皆様に積水化学工業という会社を信頼していただいた証だと感じています。
※掲載の概念図は周辺の建物を一部省略しています。また建物の高さや形状、位置、スケールなど、実際とは多少異なります。また、物件周辺の見え方を表すものではありません。 ※1 数値は計画図に記載の計画地盤の高低差より算出したものであり、実際とは多少異なります。
共用部のスタディコーナーは、一席一席が壁で隔てられた半個室ですが、当初はそういったプランではなかった。コロナ禍においてテレワークが一般的になったのにあわせてプランニングを変更しました。ほかの共用部も含めて「抗ウイルス」の壁紙を採用していることもそうですね。世の中の情勢をキャッチアップして、間に合うことはアップデートしていきました。
〈あさかリードタウン〉は、これまで私どもがつくってきた街の中でもっとも規模が大きい複合開発タウン。カンパニーを横断した協業といった試みもあり、非常に苦労しながらいろいろなこと決めていきましたね。そのぶん達成感も大きい。
高品質の自社製品を惜しげもなく使用するというのが、この街づくりにおける共通認識。実際、RCP管をはじめ実績のある製品を多く使用しているんですね。次の街づくりでも、その考え方は変わりません。
インフラ・通信技術においても最高のものを目指していました。もともと積水化学工業の工場跡地という思い入れもあり、関係者の気持ちがひとつになったことが成功の理由。〈あさかリードタウン〉が郊外の街づくりのモデルケースとして、周辺にもいい影響を与えることができればと思っています。
ここが成功したことにより、リードタウンのまちづくりというものが、カンパニーの総合力を発揮できるフラッグシップとしてのプロジェクトであることが我々にも理解できた。今後の街づくりにおいては、それを超えて行くという意味で相当プレッシャーもありますよね(笑)。
タウン内を歩く有原氏と渡辺氏
※掲載の写真はすべて2021年6月に撮影したものです。
かつてこの地には、積水化学工業の工場がありました。その記憶を受け継ぎ、新たに価値ある街をつくるために
Profile
【 積水化学工業 元東京工場スタッフ 原 政良氏 】
企画管理部の総務として、積水化学工業の東京工場に定年まで勤めていた原さん。〈あさかリードタウン〉の歴史を知る語り部です。
住民とともに、街を元気に。
かつてここは地域貢献を目指す工場。
〈ハイムスイート朝霞〉が誕生する〈あさかリードタウン〉。かつてこの地には、大手樹脂加工メーカーである積水化学工業の東京工場がありました。操業期間は1953年から2015年。実に60年間以上にわたり稼働していたその工場に長く勤務していたのが原さんです。「私が積水化学工業に入社したのは1972年8月28日。当時のことを、昨日のように憶えています──」。
「その頃、工場ではポリバケツと塩化ビニルの継手、塩化ビニルの雨樋などをつくっていました。射出成型機を用いた大量生産で、当時としてはめずらしい産業用ロボットをいち早く導入。社会科の教科書にも載り、朝霞市から多くの人が工場見学に訪れていました」。
地元の発展にも大いに寄与したという同社の工場。地域振興のために主催していた「納涼祭」では、工場のグラウンドを開放して夏祭りを開催。花火を打ち上げ、社員手作りの食べ物をふるまう屋台販売も盛況だったそうです。「社会貢献が私どものひとつの目標でしたから。朝霞住民といっしょに、地元を盛り上げていこうという想いで一丸となって取り組んでいましたね」。
工場があった時代の航空写真を手に当時の様子を解説(あさかリードタウン内クラブハウス)
地域のために汗を流す工場
地域振興に取り組んでいた旧東京工場。地域の子どもたちと共に自然と親しむ『自然塾』では、山で竹を切って竹とんぼを作ったり、ムクロジという木の実を羽根つきの羽の玉にして遊んだりと自然と関わるさまざまな遊びを行っていました。8月の最後に開催していた「納涼祭」が終わると、「もう今年の夏も終わりだね」と呟かれるほど住民たちに愛される街の風物詩だったようです。
東京工場に勤務していたOBは、
誰もがこの街の完成を心待ちにしています。
「工場が閉鎖となり取り壊しが決まったとき、市の消防署から解体前の建物を使って行う救助訓練に協力してほしいという依頼がありました」と笑う原さん。クラッシャー(粉砕機)などを用いて、建物を大規模に壊す訓練をしていったと回想します。
「そりゃあ寂しかったですよ。だけどこの工場から──かつて住宅産業に注力したいという会社の指針もあって、多くの有能な社員が住宅カンパニー(セキスイハイム)の方に出向して行ったんですね。その人たちはもう80歳近いOBの方々なんですが、みんなが今この〈あさかリードタウン〉が完成するのを心待ちにしているんですよ」。
高度経済成長期、同じ釜の飯を食べた仲間は、自分たちのことを「東京工場出身者」と呼ぶと原さんは言います。「それほど、思い入れが強いのだと思います。OB会で会うたびに『どこまで開発が進んだ?』と話すくらいですから(笑)。だから私も毎回ここに来たら写真を撮って皆に見せてやるんですよ。ほら、こんなに立派な街ができていますよ、って」。
美しい街へと生まれ変わった街路を歩き感慨もひとしお
※掲載の画像はすべて2020年8月に撮影したものです。
Profile
【 積水化学工業 元まちづくり総括 シニアフェロー 石井 寅男氏 】
〈あさかリードタウン〉のまちづくりプロジェクトを陣頭指揮した石井氏。積水化学グループ全社の力をひとつにまとめた立役者です。
お世話になった地元のために。
工場跡地から、価値のある街へ。
「東京工場を閉鎖したときには、その後の土地をどうするかはまだ決まっていませんでした。なにせ約73,400㎡もある大きな敷地です。更地にして売却するというプランもありましたが、それまで60年間お世話になった朝霞市に、なにかお返しすることはできないか。積水化学グループは住宅も手掛けているし、その総合力を活かした街ができるのではないかという議論が出てきて、まちづくりの構想が本格的にスタートしたんです」と、まちづくりプロジェクトを指揮した石井氏は当時を振り返ります。
「しかし、グループとしても初の取り組みですから、最初は本当にうまくいくのかという不安もありました。それまで独立した製品を製造してきたカンパニー同士の連携であるとか、自社の高機能な製品を使うと、価格が上がりすぎるのではないかといった懸念。しかし、それを乗り越えた末には、これまでにない『安心・安全で、環境のことも考えた快適な街』ができるのではないかと、皆がだんだんとそんな手応えを感じてきたんです」。
まちづくりのコンセプトは「Safe & Sound」(安心と快適・サステナブル)
グループの技術力を結集し、見えないところに安心を。
〈あさかリードタウン〉は、積水化学グループの総合力がいかんなく発揮された街です。水道管やガス管など重要なライフラインは耐震・耐久に優れた配管を採用。雨水浸透施設を備え、豪雨の際に力を発揮する口径の大きい強化プラスチック複合管を採用するなど災害に強い街を実現しています。
完成したとき、美しい街が
時を経て愛おしいと思えるか。
「家というのは長く住み続けてもらうもの。だからこそ会社としても売って終わりではなくとことん付き合いましょうと。先々まで、その街で快適に住んでもらえる仕組みを構築するために管理会社をつくりました。これも積水化学としては初の試みです」と話す石井氏。
〈あさかリードタウン〉では、積水化学工業みずから「タウンマネジメント」を手がける専門会社を設立。タウンコンシェルジュを配し、安心・安全な暮らしをサポートしたり、さまざまなイベントを企画し街のコミュニティ醸成に寄与しています。
「完成したとき、街はとても美しい。だけど数十年経過したとき、住民が愛着を持って住み続けた街とそうでない街とでは歴然とした差が生まれます。ヌーヴォーが熟成して年代物になるように、何十年先も、そこに住む人が街に親しみを抱き住み続けたいと願う街にしたい。『積水、いい街をつくったな』と、後々まで語り継がれるような街にすることが私たちの使命だと思っています」。
フラッグシップとなる街にしたいと語る石井氏
※掲載の画像はすべて2020年8月に撮影したものです。
※掲載のものづくり編の写真と動画は2021年6月撮影、ヒストリー編の写真と動画は2020年8月撮影。
※掲載の完成予想CG・街並み概念図は、計画段階の図面を基に描き起こしたもので実際とは異なります。また、施工上やむえない変更が生じた場合は建物竣工時の状態を優先します。
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