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ハーベストメントコンセプト
河田教授の減災コラム
河田教授の減災コラム

第2話

高齢者を犠牲にしない減災の取組みへ。

在、日本において判明している活断層は約2000、さらに潜在断層といわれるマグニチュードM6.9未満で被害をもたらす活断層は約8000ほどあるだろうといわれています。活断層地震というのは、震源のほとんどが20キロより浅いので、マグニチュードが小さくても大きな揺れで震源近くに甚大な被害をもたらします。

ということは日本に住んでいる限りは安全なところはない。いつでも、どこでも、誰でも、地震災害に遭遇する、ということを考えて常に「減災対策」に取り組んでおかなければいけません。

超高齢社会となった我が国の「減災対策」では、災害が起こった時に「助ける側に回る人」よりも「助けてほしいという人」が多くて、救援に手間取るということが課題となっています。


一例をあげると近年、洪水災害が増えているのですが、自主防災組織などの人達が支援活動を行っている際に、避難所へひとりずつ順番に運んでいる最中に床上浸水になり、待っている寝たきりの高齢者の方が溺れ死ぬということが全国的に起こっているのです。今後さらにひとり暮らしの高齢者世帯が増えると被害もさらに多発することが予測されます。

地震災害の場合も揺れた後、津波や火災に巻き込まれないよう、いち早く避難することが大事なのですが、1人で避難できない高齢者の方をいかに迅速に安全な場所に移動させられるかが生死を左右します。

実際、地震災害で高齢者の方がどれくらい犠牲になられたのかを知る数値があります。東日本大震災の被害データを見てみると犠牲者の約3分の2が高齢者の方々でした。人口比率では約3割程度だったのですがその2倍以上を上回っていました。自然災害は無常です。高齢者の方々に容赦ありません。

今、高齢社会を生きる私たちの「減災力」を高めるためには、すべて公共機関まかせにするのではなく、近隣で助け合い迅速な避難を可能にする地域コミュニティがとても大切になってきているのです。

特に地域の高齢者施設は、その重要な役割を担っています。避難訓練はもとより、中継基地的な活動や地域の方と連携したネットワークづくりなど、日頃から非常時を想定した「減災の取組み」が高齢者を被害から守るために欠かせません。「想定外」の悲劇を繰り返さないためにも今日の地道な取り組みが不可欠なのです。


河田恵昭氏 Profile
京都大学名誉教授。関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長・特別任命教授。工学博士。専門は防災、減災、縮災。阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長(兼務)のほか京大防災研究所長を歴任。21世紀COE拠点形成プログラム「災害学理の解明と防災学の構築」拠点リーダー。大都市大震災軽減化プログラム(文部科学省)研究代表者。南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ座長。熊本地震有識者会議メンバー。(2019年3月現在)

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